10月名古屋御園座 顔見世
10月の名古屋御園座の顔見世は仁左衛門を中心とした一座である。
注目は昼の部の切の引窓である。
中秋の名月、月の明かりをつかって家の明るさを調整する引窓と季節感と生活感がうまく描かれた義太夫狂言屈指の名作である。
義理とはいえ、親子、兄弟の絆もよく描かれています。
南与兵衛 南方十次兵衛に仁左衛門、濡髪に獅童 お早に孝太郎 お幸に吉弥とキャスティングもいいです。
これに今回相撲場がついて全体の構造が見えてきます。
相撲場は筋としてみるよりも役者の器で楽しめれば7いいかと思います。
これに北条先生の狐と笛吹きがつく。
渡世人の忠太郎が母を探していくうちに実の母と出会う。
ところが自分の過去とのしがらみ、今の自分の立場から母は名乗りを断る。
長谷川伸の股旅ものは、歳月が登場人物に影を落としている。
番場の忠太郎にしても、駒形茂平にしても。
アウトローは結局アウトローで一生を終えなければならないのかと問いかけを突き付けられる。
忠太郎の母、お熊にしても自分との過去とどう向き合ってよいものか途方に暮れている。
背景に長谷川伸の自伝的要素も垣間見れてくるのでいろいろ考えてしまいます。