9月 国立小劇場 文楽公演
九月は東京の国立小劇場で文楽の公演がある。
第一部に心中天網島、第2部は日向嶋と酒屋は好企画である。
第一部の心中天網島は近松の晩年の作品で近松の筆の冴えが見えてくる。
初期の曽根崎心中のように二人の思いが心中という形で完結されるのではなく、その周囲の人々も二人の恋に巻き込まれていく、周囲に二人が心中に追い込まざる得ない状況がうまく描かれている。
主人公のひとり紙屋治兵衛は恋人の遊女小春、妻のおさんのふたり義理立てに追い詰められていく。恋がどうのこうのというよりもふたりの間に板ばさみにあっていく。
小春とおさん このふたりが同じタイプの人ゆえ、治兵衛の苦悩が深まっていく。
文楽では河庄 紙屋内 歌舞伎では時雨の炬燵にあたる、大和屋 道行と通していくので小春 おさん 治兵衛が人物像が見えてくるのでいいです。
小春を和生 おさんを勘彌 治兵衛 勘十郎 孫右衛門 玉男
河庄 奥 呂勢太夫 清治
紙屋内 奥 呂太夫 團七
大和屋 咲太夫 燕三
今の文楽のベストをそろえたところです。
第二部は日向嶋
日向嶋は源氏打倒のため、日向に島流しになった悪七兵衛景清のもとに身を売った娘が一目と会いに来るが景清は拒絶する。娘の事情を知った景清は嘆き苦しむ。
景清 俊寛にしろ、自らの手で崩壊させてしまった家族、コミュニティを再生されることの困難を知った時の当事者の絶望 苦悩がよく描かれている。
景清を玉男 娘糸滝を日向嶋は蓑助が演じる。
酒屋
酒屋は茜屋半七と女芸人美濃屋三勝の心中に取り残された家族の模様を描いた作品。
半七の妻お園のくどきで有名であるが、店の外で半七と三勝が心中で暇乞いする中で
店の内ではお園はじめとする新たな家族の再生が垣間見る この対比が見どころかもしれない。張った乳を娘に含ませたくてもできない三勝など語りがよくできています。
これに道行がつく。