三日御定法
先日、吉右衛門が休演してスポーツ新聞などで話題になっていた。
歌舞伎には役者が休演するときに約束事があってこれを「三日後定法」といっている。
先日、演劇評論家の犬丸治さんがこれに触れていた。
三日後定法というのは、役者が休演するときは代役のものが三日間
本役であった人の型をそのままやるという約束事である。
吉右衛門が休演の場合、寺子屋の松王の場合は団十郎型なので衣装は黒の衣装を着て舞台に出ることにある。因みに代役を演じる松緑は幸四郎型なので本来は銀鼠、紫がかった衣装を着るものであるが、代役ということで黒の衣装で出ることになる。
三日経ると本役の役者に出れるかどうか確かめて、出られないようであれば、「触れ直し」ということで代役の役者が本役になるので自分の型でやってよいことになっている。以前片岡孝太郎さんが三日後定法は別に代役のものが三日の内は代役のものがセリフをとちてもよいとされるということを聞いたことがあります。
とちりで思い出すこととして歌舞伎役者が芝居でセリフを間違えたときに、おわびとして芝居に出ていた役者さんにおわびとしてそばをふるまっていたことがあったという。
いまでもやっているのかどうかはわからないが、吉右衛門が以前、セリフを見違えたときはそばを振舞うのに大変な出費がかかったエピソードを聞いたことがある。
歌舞伎はちょっとした約束事を知ると世界が広くなって面白くなります。
犬丸さんが松緑芸話のエピソードとして六代目菊五郎が寺子屋の松王丸を休演したときのエピソードを触れている。
そのときの二世松緑が六代目の代役で加賀鳶の梅吉、道玄を演じているが、そのとき報告で六代目の枕元に来ていると六代目が涙をボロボロにして
「お前まずくってもいいから、とにかく行儀よくやれよ」
このことばは二世松緑が座右の銘にしているがわたしも六代目のこの言葉が好きで座右の銘にしている。